あなたの足もとの妖怪

ミミズのふしぎ (ふしぎいっぱい写真絵本 (3))
ミミズのふしぎ (ふしぎいっぱい写真絵本 (3))皆越 ようせい

おすすめ平均
starsミミズってすごいんだ!!
starsすごいぞミミズ

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
みみずのオッサン (絵本・こどものひろば)
みみずのオッサン (絵本・こどものひろば)長 新太

おすすめ平均
stars赤ちゃんから幼児まで
starsこの不条理さがいいのかな

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
啓蟄を過ぎたところで地味にシーズンものの虫の絵本を。
 
あなたは虫が好きですか?
こう聞かれてYESと即答できる人でも、どうしても苦手な虫がいるものだ。
奴らは見た目も生態もあまりにもバラエティに富んでいて、
その異質さ故にどうしても親近感が持てない場合がある。
いわゆる「生理的にダメ」という嫌悪感の地雷ポイントもいろいろあって、
脚が多すぎてダメ、少なすぎてダメ、
ヌルヌルがダメ、すばしこい動きがダメ、
群れるのがダメ・・・
などなど、これまた千差万別だ。
 
ちなみに私は幼い頃から女子の割に虫は平気な方だった。
蝉や蝶を追いかけまわし、蟻の巣をほじくり土蜘蛛を引っ張りだし、
学校帰りにキャベツ畑で捕まえた青虫を何十匹も一度に飼ったりもした。
イナゴの佃煮だってどちらかと言えば好物だ。
そんな私でも、この絵本の表紙には文字通り虫酸が走った。
やたら生々しいミミズの口吻のドアップ。
絵本でいきなりのB級ホラーデビューである。
ただでさえ今時の幼児&母親は虫嫌いが多いというのに、
わざわざ幼児向けの科学絵本の表紙にこの写真を使うとは・・。
心臓の弱いご夫人などに、迂闊に見せたら卒倒しかねない。
 
身近な虫の生態について画像を多用して紹介する絵本は多いが、
少なくとも表紙はもう少し穏健に、虫アレルギーの読者にも優しい顔をしているのが普通だ。
いくらテーマがミミズだからといって、ここまでハジケなくても。
中身もやたら鮮明なフンやら産卵シーンやらの接写画像満載。
どうせ嫌われ者さ!下世話上等!てな開き直りか?と思いきや
どうもミミズの生態を絵本仕様に要約するとこうなってしまうらしい。
要するに、存在自体が下ネタの宝庫。
ミミズが男子幼稚園児に大人気なわけである。

どこの幼稚園にも嫌がる女子にわざわざ虫や蛙を見せにくるアホがいる。
我が息子もご多分に漏れず、ニタニタ笑いながら現れては、握りしめた手のひらを目の前で開いてみせる。
蛙が飛び出すぐらいでは驚かない私だが、お約束で「キャー!」と叫び、
やったー!と喜色満面の様子を見て内心苦笑する。
愛しい息子の笑顔のためならか弱いカマトト女にもなりましょうぞ。
 
巻末にある作者からのメッセージには、
「この本を読んで、身近で不思議な生き物ミミズの世界に、すこしでも興味を持っていただけたら・・」
なーんて、一見真っ当なことが書いてあるが、
興味を持つ以前に拒否反応を起こしかねない写真を敢えて表紙に使う、
そこに作り手の大人の遊び心、もとい元ヤンチャ坊主の悪ノリを感じる。
案の定、奥付を見れば作者はもちろん担当編集者も全て男性なのだった。
 
今日もどこかの家庭で、父親や息子がこの絵本を手に母親や娘に近づき、
「キャー!」という嬌声にガッツポーズを作っているのだろう。
 

最後に、虫アレルギーのお嬢様にも安心してお勧めできるミミズ絵本を。
「みみずのオッサン 」では、長新太氏ならではのファンキーな色彩で、
単純かつゴーカイなミミズ式和平工作が展開される。
読後の不思議に清々しい気持ちは、
しつこい便秘が解消した瞬間の爽快感に似ていなくもない。
おっと、結局下ネタで締めてしまった(恥)