読む「ゆる体操」のススメ

4834017370みんななにがすき?
沢野 ひとし
福音館書店 2001-02

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職業病か、はたまた深夜のパソコンのし過ぎが原因か、どうも最近腰が痛い。整体や鍼灸でバキバキッ、シャキーン!と治したいところだが、なかなかその時間もとれないので、夫に勧められたゆる体操なるものを毎晩の就寝前にやってみることにした。

ゆる体操」を考案した高岡英夫氏の著書には、誰でも身体をゆるめさえすれば心身の健康や身体能力だけでなく人格も仕事も家庭生活もほぼ全面的に向上するという、一見どう見てもマユツバものの講釈がとうとうと述べられているのであるが、数ヶ月前に始めた夫によると確かに効果があり、疲れにくくなり身体が軽くなったという。ならばやってみても損はなかろうと私も見よう見まねで始めたわけだ。実践方法はいたって簡単で手間も時間もお金もかからないが、唯一にして最大の難点は、やっている最中の姿が凄まじくアヤシイことにある。夜中に夫婦で向き合って真顔でこれをやっている様子は、端から見たらそうとう怖いのではないかと思う。
このゆる体操にはその体勢によって「寝ゆる」「歩きゆる」など各種あり、それぞれに身体各部の余計な緊張を徹底的にゆるめる効果があるという。ただしこれらの体操はあくまでも身体的なゆる効果を第一に考案されたものなので、身体がゆるんだ結果精神的にも楽になるという効果はあるかも知れないが、心理的ストレスの解消そのものを狙ったものではないようだ。
そこで私は、絵本を読むことは時にアタマとココロの緊張や疲れをゆるめ緩和する「読みゆる」に値するのではないかと考えた。そして真っ先に頭に浮かんだ絵本が、今日紹介する沢野ひとし氏作の「みんな なにが すき?」である。

この絵本は一言で言うと、「ゆるんでいる」のである。内容を詳しく説明するのがアホらしくなるぐらい素晴らしくゆるみきっていて、まさに「ゆる絵本」代表にふさわしい。絵も文も、嬉しくなるぐらい素敵に脱力していてココロが和む。
とはいえ最初から最後までゆるみっぱなしでは面白くないが、そこに唯一骨のあるところを見せようとするライオンが登場するのがこの絵本のニクイところなのだ。このライオンの天然ボケな表情&無意味なポーズが実にいい!つい突っ張って見せて(そのツッパリがまた、どうしようもなくゆるい(笑))ひっこみのつかなくなったライオンさんも、最後には無事ゆるキャラ全開となり、ハッピーなゆるエンディングにつながるのだった。

それにしても、「ゆる絵」&「ゆる文」作家としての沢野ひとし氏の才能はスゴイと思う。骨格を感じさせない佇まいの動物たち。手書きで書き込まれるぼそぼそとした素朴なつぶやき。緻密さや整然さとは無縁のおよそ美しいとはいえない作風だが、なんともいえない懐の深さを感じさせ、ココロ癒される。
世の不条理にブルーになった時にはこんな「読みゆる」絵本で心のコリをほぐそう。