一緒にお茶を

4871101045変なお茶会
佐々木 マキ
絵本館 2000

by G-Tools
ネット上のコミュニティのオフ会というものに時々参加するのだが、普段同じテーマについて語り合って身近に感じている仲間でも、実際に一堂に会してみると驚くほど表向きの属性がバラバラだったりするのがとても面白い。逆に、まるで厳密な入会規定があるかのように見た目もおそらくキャラも近い属性の人々が集まるパターンもあり、休日の秋葉原などを歩くといかにもそれらしき「オフ会流れ」のグループを見かけたりする。「同人」とはよく言ったものだ。
 

数年前、あるサークルのオフ会に参加した時もとても面白かった。見るからにお堅い公務員タイプのサラリーマン、中学生ぐらいに見える専門学校生、登山が趣味のアウトドア写真家、夜の歌舞伎町で蝶になるショーダンサー、年齢職業不詳の業界人、そしてごく平凡な主婦(に見えるであろう私)…などなど、一見実生活上になんの接点もなさそうな人間が集い、意味不明なハンドルネームで親しげに呼び合って和気藹々と盛り上がっている様は、端から見たらさぞかしアヤシイ集団に見えたことだろう。
ただ、人は見かけによらないというが、その人が語る言葉や文章というものは案外如実にその人となりを表すようで、目に見える要素ではイメージとのギャップに驚いたとしても、一人一人と向き合って話してみると「おお、やはりいつもの○○さんだ」と納得し、ホッとするのが常だ。この安心感を持ってイメージのギャップを楽しめるのがオフ会の醍醐味だと私は思っている。

ちなみに読者の皆さんは、どんな「えほんうるふ」をイメージして今この文章を読んでいるのだろう…(汗)プロフィール記事をアップしたせいか、その後「男性だと思っていた」という人は現れなくなったが、相変わらず「鋭い」だの「キレのある」などといった評を頂くことが多く、我が身を振り返っては赤面の日々である。私の実像を知る人にとってはまたとないネタになっているに違いない。
ともあれ、今後私と対面する予定のない方はお好みの美女・才媛を想像してお楽しみ下さい。

さて、今日の絵本「変なお茶会」では、年に一度の招待状を受け取ったメンバーが万難を排して遠路はるばる某所へと集い、知る人ぞ知る世紀のイベントに立ち会い、それを楽しむひとときを共有する。集まるメンバーのキャラクターも珍妙なら各々の移動手段も趣向が凝らされ、なによりもそれだけの時間と労力をかけた目的がただ一杯のココアを共に愉しむ為、というのが素晴らしく粋なのである。お茶会そのもの以上にそこに至る過程や付随するモロモロを愉しむというオトナの余裕が感じられ、素直に「いいなぁ〜」と思うのだ。お茶会のテーブルについたメンバー一同を見渡すとやはり社会的な属性はてんでバラバラで、いったいどんな縁でつながった仲間なのだろうと考えると何とも怪しげでワクワクする。ひょっとするとメンバーしか知らない入会条件に基づき、世間一般にはその存在すら知られていないプチ秘密結社なのかも知れない。だいたい招待状の差出人すら最後まで不明なのだからますますアヤシイ。年に一度の超自然現象の発生時間を予測し、それぞれ移動距離も手段も異なるメンバーの一人一人に絶妙なタイミングで招待状を送るなんて、考えたらものすごいことをする組織である。それなのに、目的を達したら「それじゃあまた来年」とあっさり別れてしまうところがまたいい。あまりにもあっさりしていて実はお茶会は表向きの名目で真の目的は他にあったのではと勘ぐってしまうほどだ。本当にただ一杯のココアの為だけに集まったのだとしたら、なんと贅沢なお茶会であろうか。これぞまさしく遊びゴコロを持つオトナならではの粋狂というものだ。

私にもいつか、招待状は届くだろうか。いや、届くのを待つよりもいっそ、私から送ろうか。

先日、下北沢で小さなカフェに入った。夫婦二人でやっているらしいそのカフェは、心地よい音楽といい感じにへたった座り心地の良いソファと気取らない食事が用意されていて、まるで誰かの家にふらっと立ち寄ったような寛いだ空気が流れていた。帰り道、夫と二人で将来あんなカフェをやるのもいいねとたわいもない夢を語り合った。
知る人ぞ知る、オトナのための絵本カフェ。果たしてお客は来るのだろうか。

いつか、オトナノトモに集う粋なオトナの皆さんと、ささやかなお茶会を共にできたら面白いだろうと思う。天然ものの湧泉ココアはちょっと無理だが、純ココア粉と新鮮なミルクで大鍋一杯にビターなココアを練って、好き勝手にアレンジして飲んでもらうなんてのも面白そうだ。会って何を語るかなんてどうでもよくて、ただ集うこと自体が楽しみなのだ。その一杯のお茶のために集う過程を楽しめる方ならどなたでも大歓迎。
では手始めに、画面の前のアナタと、淹れたてのココアで乾杯♪


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