さすらいのらいおんの男気に泣く

ラチとらいおん
マレーク・ベロニカ
福音館書店 1965-07


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世界中で一番弱虫の引きこもり少年ラチ。そんな彼のもとへ、ある日突然憧れのライオンがやってくる。しかしそれは、ラチが思い描いていた強くてカッコイイ獅子とはえらくギャップのある、ちっこくてやたらカワイイ「らいおん」であった。

このライオンの登場の仕方が素敵だ。カメラをパンするといきなりそこにいる、というお約束のパターンなのだが、カワイイ顔して花なんかくわえちゃって、どうせならアコギも抱えていて欲しいぐらいだ。
そしてらいおんトレーナーのラチ少年強化訓練が始まる。いったい何をするのかとページをめくれば、謎の体操である。
こんなことして強くなれるわけがない。おちょくってんのか。
でもあまりにもカワイイので許す。
レーニングの甲斐あって、やがてラチは強くて勇気のある男の子になる。だが、ラチが礼を言おうと思ったその時にはもう、らいおんの姿はない。
この引き際の鮮やかさはすごい。コドモ読者にはちょっと酷な展開か?とすら思う。
でもこの時ラチがみせる涙は甘えや感傷の涙ではなく、男の涙である。これに思わずもらい泣きしてしまう。
どこからともなく現れては、情けない腰抜け男子を立派な男に育て上げ、さりげなく去っていくさすらいのメンター、らいおん。
惚れます。全国の気弱な男子に捧げたい絵本である。

ところでこの絵本は色使いのセンスがまたいい。真っ白な背景が引き立つシンプルな絵がオシャレだ。
ただ、ラチが着ている全身ニット?みたいな服はなんなのか。
作者のマレーク・ベロニカ氏はハンガリー出身だが、かの地ではポピュラーなこども服なのだろうか。ベビー服のようにも見えるし、いったいどうやって着るんだろうとか見るたびに気になって仕方がない。
しかし何度も読み返すうちに、むしろこの服こそが弱虫ラチの特徴を端的にあらわしているような気がしてきた。ここでまた、作者のセンスに脱帽なのである。
  

【この絵本に関するお気に入りあれこれ】
・ポチッとな!/りょうじさんのこれぞ最強!ママの手作りらいおん
・瞬刊★差楽部/dekayocchiさんのポケットの中のらいおん
・絵本と子どもの本が好き!/hirobonさんの少年の日の通り道・・