いしや、まめや、けしごむなどをいれてはいけません。

はなのあなのはなし
やぎゅう げんいちろう
福音館書店 1981-01


by G-Tools
小さい頃、子ども達の間で「耳を動かせる」というネタが流行った。
本当に動かせる人がいるのかどうか知らないが、当時を思い出すと「オレ、出来るよ!ほら見て!」と豪語するヤツに限って、どう見ても動いていたのは耳ではなく鼻の穴だった。その必死さに笑ったものだ。

そんな動かすだけでネタになる楽しい鼻の穴を、さらに楽しく真面目に紹介したのがこの絵本である。

鼻の穴(及び、鼻くそ)に関する彼らの何気ない素朴なつぶやきや、「ぼく」「わたし」についての大マジメな解説、鼻の穴にまつわる身の回りの事象に対する見たまんまの指摘などは、もともとウケを狙っていないだけにストレートで面白い。

「ぼくも おじいさんになったら あれぐらいの はなのあなに
なるんだろうか? どきどきしてしまう。

なんていう一文に、なぜかこっちまでドキドキしてしまうのだ。コドモ達の超強力なセンス・オブ・ワンダーは、こんな卑近なことにも遺憾なく発揮されるということに私は感動を覚える。

しかし、感動してばかりもいられない。彼らはその無垢な感性によって、時に常人には理解できない(というか、普通は思いっきり退く)奇っ怪な行動にも出る。
たとえば、夢中で鼻をほじっては、机の上にせっせと自分の鼻クソを一列に並べている幼児に、「なんでそんなことを?!」と聞けば、平然と「…並べたいから。」という返事がにこやかな笑顔と共に返ってくる。
こんなやりとりがリアルな日常となる幼児との暮らしはとても刺激的で退屈しない。
…ときどき、泣きたくなるが。