オトナ向け絵本について。

私は「大人向けの絵本」が苦手な人間の一人である。
あるいは、大人向けとして売られている絵本の
作られ方・売られ方が嫌いなのかも知れない。

子ども向けの絵本でいうところの、知育絵本のようなものだ。
「これを読めばお子さんにこんな心(知能)が育ちますよ」的な
作りの絵本では、読み手となる子どもは単なるマーケティング上の
ターゲットとして捉えられていて、子どもがもともと持っている
感性や洞察力、成長力が無視されているように感じられ腹が立つ。
同じように、「これさえ読めばあなたの疲れた心も傷ついたハート
もバッチリ癒されますよ」という、読み手の感性を無視した
押しつけがましさが、大人向けと銘打った絵本からは感じられる。

書店で児童書コーナーではない場所に平積みにしてある絵本。
美しい装丁に目をひかれて手に取ると、腰巻きに「癒し」だの
「いのち」だの、胡散臭い(説教臭い?)文字がチラホラ。
この「ほら、癒すぞ〜」という売り手の意気込みを感じるたびに、
某誌編集部での企画会議の情景が思い出され、「作品」と
いうより入念に企画された「商品」に見えてきてしまう。
そして天の邪鬼な私はじっくり読みもしないウチに、絶対にこんな
企画モノなんかに癒されてやるもんか、と思ってしまうのだ。(笑)
だから、苦手と言うより読まず嫌いに近い。もったいないことだ。

あとは、単なる私の趣味の問題だ。
子ども向けの絵本をオトナ読みして楽しんでいる自分には、
大人向けの絵本の多くはあまりにも狙いが分かりやすく面白みを
感じない。文章に無駄がなさ過ぎてツッコミようがなかったり、
逆に説明が多すぎて興ざめだったり。
学校の道徳の時間で読まされるテキストがうんざりするほど
退屈だったのを思い出す。読み手の受け止め方に「模範解答」
が想定されている文章を読まされるほどつまらないことはない。
(だから、大上段に構えてこちらの感情操作をしようとしない
イラストレーター系作家の絵本は、私にとっては作品集のような
もので、趣味さえ合えば素直に愛せるのだった)

現代の大人の生活はとかく忙しすぎて、心がほころんだときに
じっくり時間をかけて修復する余裕がない。だからこそ
「大人向け絵本」の即効性が受けているのかも知れない。
読むサプリメントみたいなものか。
サプリメントに頼りすぎて本来の食事の楽しさを忘れないよう
にしたいものだ。


※こんな理由で読まず嫌いの私に是非読ませたい!という
大人向け絵本をご存じの方はぜひコメント・トラックバック
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