毎日が晴れ舞台

オーケストラの105人オーケストラの105人
カーラ カスキン Kara Kuskin Marc Simont

すえもりブックス 1995-11
おすすめ平均

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やれやれ。ようやく年内にケリをつけたかった大仕事の目処がたって、ほっと一息。
手つかずの年賀状から目をそらしつつ、絵本だ、絵本。

と言っても、絵本の前に今回は珍しくテレビドラマの話から。
先日、フジテレビの月9ドラマ「のだめカンタービレ」が惜しまれつつ終了した。
素晴らしい作品だった。普段あまりテレビを見ない私が、たまたまこの連ドラの初回を目にして自分でも驚くほどハマッてしまい、
(多分)生まれて初めて1回も欠かさず最終回まで見切ったのだった。
しかもただでさえ忙しい中、公開収録のエキストラに応募して平日の早朝に夫に子供を任せてロケに駆けつける入れこみよう…
我ながら狂ってる。私ってこんなにミーハーな女だったのね(恥)。
  
そこまでハマッた理由の第一が面食いの私がキャラはまり役の主演男優に年甲斐もなくのぼせ上がったから(爆)
というのは否定しないが、とにかく原作が素晴らしく私のツボをついた変態加減だったこと、
キャスティングが絶妙でそれぞれのキャラクターが非常に魅力的だったこと、
クラシック音楽&オーケストラというただでさえ扱いの難しそうな題材を
原作に忠実に丁寧に映像化したスタッフと役者達のプロの仕事ぶりに毎回感心させられたことなど、
偏屈者の私をミーハーに変えるだけの要素が揃っていたと思う。
ちなみに我が家の子供達も大ファンとなり、毎日のように録画を見ては笑い転げている。
スルメ交響曲を外で歌うのはやめて欲しいが…
 
 

ということでオーケストラとくればこの絵本。
舞台の上にオーケストラという完成された集合体ができあがる、そのほんの数時間前からこの絵本のストーリーは始まる。
私のようなクラシック門外漢から見ると、プロのオーケストラという集団は特殊技能を持った選ばれた人間の集団に思え、
個々の団員にそれぞれの私生活があり凡人である自分と同じような日常を営んでいることが想像しにくい。
しかし、それぞれの準備を経てステージへと向かう105人のメンバーの姿を眺めていると、彼ら一人一人に「ケ」の日常があり、
トイレにも入れば下着も晒し、それぞれに家族がいて、ごく当たり前にそれぞれの生活を営んでいることが分かり、
なんだか親近感が湧いてくる。そして、そんな彼らが「ハレ」の場に集まってそれぞれの仕事を果たすことで、
凡人には決して作り出せない素晴らしいハーモニーが生まれる…、
そこにオーケストラの感動があるということを読む者に気が付かせてくれるのだ。
 
やっぱり、音楽って素晴らしいわね…(by真澄ちゃん)
そういえば私も中学時代、ほんの一時だが吹奏楽部に所属していたことがある。
シーラ・Eに憧れてパーカッションを担当したが、その動機からして方向が間違っていたのか、
同性の先輩に「生意気だ」云々のいちゃもんを付けられ、鬱陶しくなって1年程でやめてしまった。
もしあのまま続けていたら、私の人生は変わっていたのだろうか?
 
でも、たとえ実際には楽器演奏に縁のない生活をしていようと、
私たちは誰もが複数のオーケストラに所属するプロの音楽家のようなものではないだろうか。
家族というオケ、学校というオケ、職場というオケ、地域社会というオケ…
それぞれの場所で、いかに自分らしく、自分の音を奏でるか。
不協和音が生じたときに、どうやってそれを解消するか。
どうやってお互いの良さを引き出し、バランスを保ち、美しいシンフォニーを作り出すか。
人は皆そうやって自分の与えられた楽器と格闘しながら生きているのだろう。
 
それにしても、「のだめ〜」のSオケは素晴らしかった。
集団のために個を捨てるんじゃなく、個を最大限に活かすための集団。
技術的には劣ろうとも、それぞれが自分がその場にいることを幸せに思い、その喜びが一人一人にみなぎって輝いていた。
全ての人が自分にとってのSオケを見つけられたら、きっと世の中はもっと素敵になるだろう。
ビバ音楽!ビバ人生!!