巨大な食材をノコギリで切る快感

おおきなおおきなおいも―鶴巻幼稚園・市村久子の教育実践による
赤羽 末吉
福音館書店 1972-10


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巨大なものに憧れる気持ちというのは本能だろうか。
もう理屈抜きでワクワクする。
そのせいか大きな食べ物を大勢で寄ってたかってどーした
こーしたというのは絵本界でも普遍的なモチーフらしく、
古今東西に名作がたくさんある。

ぐりとぐら」もそうだし、「おおきなかぶ」も
「ありとすいか」も「ジャイアント・ジャムサンド」も。
他にもたくさんあり、その多くが子どもにも大人にも
一番好きな好きな絵本の一つとして記憶されていたりする。
ここにも「巨大食材もの」というカテゴリーを作ろうかと
思ったぐらいだ。いや、いずれ作るかもしれない。

園児達が期待を込めて張り切って描いたおいもの絵。
見開き一杯のおいもが「まだまだ」「まだまだ」と続く。
本当に「え、まだ?」ってぐらい続く。
延々と続くイモのページをめくる続けてようやく芋のしっぽに
辿り着くと、先生が腰を抜かすのが楽しい。
赤羽末吉氏の絵は素朴なようで線が力強く、これぞ
「おいも色」というべき絶妙な赤紫が映える。

この巨大芋図の制作を家で子供達とやったことがあるが、
とても楽しく爽快感のある作業であった。つい調子に
乗って紙をどんどんつなげてしまい、しまいには
部屋中に芋がとぐろを巻いた。イモというより毒々しい
色の大蛇のようなシロモノができあがったわけだが、
これをチョキチョキ切っておいもパーティごっこもした。
イモ好きの私にとって、この本の豪快なおいもパーティ
は永遠の憧れである。このボリューム感がたまらない。
使い切れないほどの食材があるのに、メニューが
イモの味そのものを楽しめるシンプルな調理法の
天ぷら・焼き芋・大学芋の3品のみというのがまた
潔くて良い。スイートポテトなんてお呼びじゃないのだ。
 
かようにも巨大食材ものの絵本は楽しく、元気が出る。
これはどうだ!という絵本をご存じの方はぜひ教えて欲しい。