こどものともは今も友

日本全国の絵本好きがリスペクトして止まない存在、それが福音館書店の月刊物語絵本「こどものとも」である。
1956年の創刊以来、オリジナリティあふれる創作絵本を世に送り続け、数え切れないほどの改訂・増刷を経てなお、世代を越えて愛され続ける名作が数多あるという読者層の厚さと人気を誇る月刊誌なのである。

実際、誰かに「好きな絵本」を聞いてみると年齢を問わず真っ先にこどものともの絵本を挙げる人が多い。むしろ「ぐりとぐら」「スーホの白い馬」など歴代名作の殿堂入りを果たしているような絵本は、元々が月刊誌のこどものともとして刊行されたものであることなどとっくに超越して広く世間に浸透しているようだ。

この間違いなく日本の絵本史上最大にして最良の影響を与えた「こどものとも」の創刊当時からの変遷を追ってみると、明確なビジョンを持って子どもにとって本当に良い絵本というものを徹底的に追求していった編集者松居直氏の鋭い視点やこだわりが見え、たいへん興味深い。
創刊から5年程は赤字続きであったというが、それでも妥協を許さず読者を信じて絵本業界の常識を覆す試みを繰り返し、頑固なほどにその編集方針をつらぬいた松居氏には脱帽する。そのこだわりの結果、子どもだけでなく大人の鑑賞にも堪える素晴らしい傑作絵本が続々と生み出されていったのである。
もちろん、我が「オトナノトモ」でも今後、福音館書店の絵本が最も多く登場することは間違いないだろう。

ちなみに、松居氏の著書「絵本とは何か」の中で披露されている、こどものとも創刊や他の福音館書店のロングセラーの刊行にまつわる裏話には、石井桃子瀬田貞二・ガアグ・エッツ・ブラウン・ブルーナ・赤羽末吉・加古里子長新太・中川/大村姉妹などなど、絵本界の歴代スーパースターがじゃんじゃん登場し、絵本好きにはたまらない。
他にも、ディズニー絵本と名作(ダイジェスト)絵本へのアンチテーゼや、昔話の勧善懲悪についての考察など、大変おもしろく含蓄に富んだ話がたくさん出てくる。
福音館書店のファンのみならず、絵本好きなら是非一読をおすすめする。


追記:先頃、福音館書店による「こどものとも50周年記念ブログ」が開設された。
歴代の名作がずらり!それだけでなく今後の執筆陣も期待できそうな、むちゃくちゃ豪華で中身の濃いブログである。1年間の限定企画だけに、絵本好きは今すぐチェックすべし!!