究極のおにぎりとは

4834011860おにぎり
平山 英三 平山 和子
福音館書店 1992-09

by G-Tools
おにぎりは誰にでも作れるようで、実は難しい料理だ。握りが甘いと食べているうちに崩れてしまい、下手すると具が丸ごと転がり落ちそこらじゅうに飯粒がくっつき・・と、かなり悲惨なことになる。かといってむやみに力を入れて握ると米の粒がつぶれてしまい、妙に歯ごたえのある「固握り飯」になってしまうのだ。
 

もちろん、おにぎりという料理の味自体は、技術よりもそれを食べるシチュエーションに左右されるところが大きいのだが、料理としての完成度を考えると、これまでの人生の中で何百個何千個と食べたはずのおにぎりの中で、パーフェクトな握り具合だったものは、案外と少ないような気がする。

そんな幻の完璧おにぎりを目で味わえるのがこの絵本だ。
ページをめくるなり目に飛び込んでくるのは、相当に年季の入った手が湯気のたつ炊きたてご飯をほぐす様子。
この掌を見れば、これからおにぎりを握る者が若い新人ママやそこらの弁当屋のバイトの若造なんかじゃないことは一目瞭然。おにぎり握って30余年的な貫禄のある手なのだ。(ちなみに私がこの絵を見て真っ先に連想したのは、JR大塚駅前「ぼんご」のおかみさんのゴッドハンドだ)
この手が、ほかほかと湯気のたつ熱々のごはんを手早くかつしっかりと握っていく。余計なコピー不要で確かな信頼と実績が伝わってくる無駄のない手つき。これこそ、しっかりと形をとどめつつ、ふっくらとした炊きたての米粒がちゃんと味わえる究極のおにぎりに違いない!!
具はシンプルに梅干しのみ、それと塩と海苔。無造作に巻かれた海苔の湿り気を帯びたつややかな輝きがたまらない。
最後にできあがった皿にはちゃんと、子供用と大人用に大きさの違うおにぎりが仲良く並んでいるところに母の愛を感じる。
おかあちゃーん!!
 
ここまで読んでたまらなくなったあなた、残念ながらこのおにぎりはコンビニでは絶対に買えません。
いざ、キッチンへ!炊きたてのご飯さえあれば、空腹感とノスタルジーがあなたのいびつな素人握り飯をおにぎり専門店を超える一品に仕立ててくれることだろう。
あるいは、「ただ、おにぎりが食いたくて」と帰省するも良し。そんな思い出が今からでも作れるあなたは幸せだ。
(2005.11.28 一部改訂)